たえて日本画のなかりせば : 上野公園編

たえて日本画のなかりせば 上野公園編

会期 
2021年6月5日(土)0時〜24時の随時(24時間限定)

*「第8回東山魁夷記念 日経日本画大賞展」が、2021年6月1日(火)〜6月6日(日)の会期で、上野の森美術館で開催されている

場所
上野恩賜公園内各所

参加作家(五十音順): 泉桐子、大平由香理、尾花賢一、金子富之、金子朋樹、菊地匠、硬軟(千葉大二郎)、小金沢智、春原直人、多田さやか、谷保玲奈、ちやのある Le Cha noir(山下和也)、⻑沢明、中村ケンゴ、丹羽優太、ベリーマキコ、歩火(川合南菜子、土田翔、三瀬夏之介)、山本雄教(合計18組20名)
ドキュメント(五十音順):岡安賢一、國友勇吾、笹谷遼平、鈴木一成、島田隆一、西澤諭志、吉江淳
主催:パラレルモダンワークショップ(Parallel Modern Workshop)

コンセプト
「パラレルモダンワークショップ」(Parallel Modern Workshop=略称P.M.W.)は、近代(modern)の並行世界(parallel)への想像力を通し、近代化を経た現代の捉え直しを試みる思考実験=研究会(workshop)である。それらは主に、ある設定のもと実施される、基本的にはメンバー間ですら内容共有されない各自の実践を通して行われ、それら一連の実践は、事後、展覧会やドキュメントを通して共有・公開される。
P.M.W.は、その最初の試みとして、「たえて日本画のなかりせば:上野恩賜公園篇」を実施する。ここにある一枚の錦絵は、明治10(1877)年、勧業政策の一環として上野公園(大正13年より、上野恩賜公園)で開催された内国勧業博覧会の3回目(明治23年)を描いた、浮世絵師・楊斎延一(1872-1944)による《内国勧業博覧会 上野公園一覧》(1890年)である。明治23年4月1日から7月31日まで開催され、(不振であったと言われるが)100万人を集めたという同展の、このシーンは桜の描写から開催間もない一景だろう。画面奥には「美術館」と付される建築物が見え、その正面には日本国旗が掲揚されている。仰々しい馬の隊列とともに「美術館」を出ていくのは、行幸を終えた明治天皇か。
「美術館」と「動物園」のあいだ、クレジットのない建築物がある。明治20(1887)年に開校(*)したばかりの、東京美術学校(現・東京藝術大学)と思える。同校は、第3回内国勧業博覧会が行われた明治23(1890)年、齢27歳の岡倉覚三(天心)が(初代)校長となった。ただ、この当時、学校名すらクレジットされないほど、まだその名は一般に知られていなかったか。明治半ば、「日本画」の草創期、満開の桜、押し寄せる群衆とは対照的に、ひっそりとこの画面の奥で、ようやくその誕生の声を上げていたのか。まだ、日本画と日本国家、殖産興業とは、距離を遠くしていたのか。
それから130年余り。上野は日本有数の美術館・博物館のメッカとなり、日本画は、アジア・太平洋戦争敗戦後「日本画第二芸術論」が叫ばれながらも、ついに滅亡することなく、「国民画家」と呼ばれる作家までも輩出し、あの地・この地で教授され、展示されている。ある「日本」の表象として。
ここで想像してみる。錦絵上で明示されていないように、もしこのとき上野公園に、東京美術学校がなかったならば。ここで、日本画が教授されなかったならば。すなわち、東京美術学校由来の日本画がなかったならば、いま、日本画はどのようなものとなっていたか。東京で。あるいは、日本で。
「たえて日本画のなかりせば:上野恩賜公園篇」は、この錦絵が描かれてから131年後、春にはCOVID-19拡大防止による花見禁止からバリケードすら張られた2021(令和3)年の上野恩賜公園で、現在の美術家たちがその黎明期の不在を仮想したときどう振る舞うか(あるいは、振る舞わないのか)、という大いなる矛盾を含んだ思考実験である。ありえたかもしれないパラレルな世界へのいっときの没入のはてに、私たちは現在への新しい想像力を手に入れることができるだろうか?(小金沢智)

(*)「開校」ではなく「設立」の誤り。2022年6月14日、小金沢智記す。ルール
1.「たえて日本画のなかりせば:上野恩賜公園篇」は、2021年6月5日(土)の0時から24時までの24時間、楊斎延一《内国勧業博覧会 上野公園一覧》(1890年)に描かれる範囲内=現在地内をフィールドに、各作家の行動・実践として、随時行われる。
2.その行動・実践には、上野恩賜公園という場所の歴史性をはじめ、東京美術学校(東京藝術大学)、美術館、日本画などの制度や表現に対する各作家の態度が個々であらわれると想像される。ある作家には具体的な形となってあらわれ、ある作家には抽象的な思考となってあらわれるかもしれない。そのあらわれかたは限定しない。また、なにもあらわれないかもしれない。
3.作家の行動・実践は、事前に、作家間で共有されない。作家は、共通のコンセプト(上記)に基づく並行世界を、あくまで個別で行動・実践する。ただ、行動・実践内容上、共有が必要な場合はその限りではない。
4. P.M.W.全体による、フライヤーやインターネットでの情報発信は行わない。ただ、行動・実践内容上、個々で必要な場合は各作家の判断のもと個別で実施される。
5.各作家の行動・実践は、作家本人ないし第三者による映像、写真、テキスト等による記録を行う。それらは、後日、展覧会やドキュメントで公開・検証される。
6.各作家の行動の責任は、その作家が負うものとする。COVID-19のパンデミックによる各種制限を最大限考慮すること。
7.参加費を、一律、50,000円とする。この総額から、一部をドキュメントの記録費、一部をドキュメント(本)の制作費(編集+デザイン+印刷)に充てる。
8.作家は、上記コンセプト及びルールを承知した上で参加する。報告
本活動は一般的な情報公開はされないまま、2021年6月5日、上野恩賜公園内にてゲリラ的に実施された。

当日協力:今野沙知子、下寺孝典、杉原出雲(山下和也代行)、塚田めぐみ(山下和也代行)、三吉瑠美衣、吉岡直将(尾花賢⼀代行)、和田宙人、GILLOCHINDOX☆GILLOCHINDAE

Exhibition